細部までかなり作り込んだTシャツができました。
文字の間隔を何度も調整し、線の太さも整え、拡大して見れば小さな部分まできちんと意味がある。プリントサンプルを手に取っても悪くありません。むしろ、なかなか良い。商品詳細ページへ大きな写真を載せれば、加工の細かさやデザインの面白さも十分に伝わりそうです。
そこで、実際の商品一覧へ並べてみます。
黒いTシャツ。 黒いTシャツ。 黒いTシャツ。 また黒いTシャツ。
「全部一緒やん」
そう、一覧ページで全部一緒に見える問題を、我々はクリアしなければいけません。
商品詳細ページでは魅力的に見えるデザインでも、一覧ページの小さな画像では、ほかの商品に紛れてしまうことがあります。細かな線も、同系色のプリントも、こだわった文字組みも、画像が小さくなれば一つの黒い塊に見えるかもしれません。
商品は、詳細ページでじっくり評価される前に、一覧ページで「詳しく見るかどうか」を判断されます。
つまり商品デザインは、完成品として美しいだけでは足りません。縮小され、隣の商品と並び、スマートフォンでスクロールされる状態でも、何の商品なのか、どこがほかと違うのかが伝わる必要があります。
01
詳細ページでは良い。一覧では埋もれる
商品詳細ページには、時間と場所があります。
大きな商品写真を表示でき、正面、背面、着用写真、プリントの接写、素材の表面まで複数枚で見せられます。説明文では、使用しているボディ、加工方法、デザインの背景、サイズ感なども伝えられます。
そこまで来た人は、すでに商品へある程度の関心を持っています。画像を拡大したり、説明を読んだり、別の色と比較したりしてくれる可能性があります。
しかし、商品一覧は事情が違います。
一覧では、一枚の商品画像に、商品名、価格、色、バッジ、お気に入りボタンなどが同居します。そのカードが二列、三列と並び、前後には似た商品が続きます。スマートフォンでは画面そのものが小さく、指を動かせば次の商品がすぐ現れます。
購入者は一枚ずつ腰を据えて鑑賞しているわけではありません。画面を流しながら、気になった商品で一瞬だけ指を止めます。その短い時間で「自分に関係がありそうか」「ほかの商品と何が違うのか」を判断しています。
ここで問題になるのが、詳細ページで成立していた魅力が、一覧ではほとんど見えなくなることです。
たとえば、黒いボディへ濃いグレーで小さなプリントを入れたTシャツは、実物では落ち着いていて上品に見えるかもしれません。近くで見れば、光の当たり方によってプリントが浮かび、さりげない面白さがあります。
ところが一覧画像では、ほぼ無地の黒Tシャツに見える。
上品さが悪いのではありません。上品さが存在ごと消えているのが問題です。
02
商品カードは小さい
デザインを作るとき、私たちは大きな画面で見ています。
Illustratorでは好きなだけ拡大できます。商品写真も、撮影後に大きく開けば、布の質感やプリントの端まで確認できます。その状態で見ていると、細かな要素も十分に存在感があるように感じます。
しかし、実際の商品カードはかなり小さいものです。
「商品カード、ちっちゃ!」
PCでは三列や四列、スマートフォンでは二列で表示されることもあります。画像の下には商品名と価格が入り、セール表示やお気に入りアイコンが重なる場合もあります。商品画像として使える範囲は、制作画面で見ていたときより、ずっと限られています。
この小さなカードの中で、細部をすべて説明しようとしても無理があります。
必要なのは、情報を増やすことではなく、最初に見える主役を決めることです。
大きな文字なのか、特徴的なモチーフなのか。プリント位置なのか、ボディカラーなのか、シルエットなのか。一覧では、その商品の違いを最初に認識させる要素を一つ選びます。
細かな魅力は、詳細ページへ進んでもらってから伝えればよいのです。商品カードは作品の解説書ではありません。入口の看板に近いものです。
映画のポスターに脚本を全部載せないのと同じです。

03
色違いと別デザインを区別できるか
商品一覧では、同じデザインの色違いをどのように扱うかも重要です。
白、黒、ネイビー、グレーを別々の商品カードとして表示すると、同じ構図のTシャツが続きます。それ自体は悪くありません。色を比較しやすく、好きな色から商品を選べる利点があります。
ただし、色違いと別デザインの区別がつかなければ、一覧全体が単調になります。
「黒、黒、黒黒黒黒黒黒黒、くろくろくろ〜〜〜〜ッ!」
落ち着いてください。商品一覧です。
同じ黒いボディに、小さな白いプリントが入った商品が何枚も続けば、カードを一つずつ開かなければ違いが分かりません。購入者にとっては、商品を選ぶ前に、まず違いを探す作業が発生します。
反対に、同じ商品の色違いなのに、撮影角度、背景、モデル、トリミングがすべて違うと、今度は同じシリーズであることが伝わりにくくなります。
一覧では、そろえるものと変えるものを決めます。
同じ商品の色違いなら、写真の角度、商品の大きさ、背景、トリミングをそろえる。そのうえで、ボディカラーやプリントカラーの違いを見せます。
別デザインなら、一覧の小さな状態でも主役が違って見えるようにします。プリント位置、モチーフの面積、配色、写真の選び方のどこかで、カード同士の違いを作ります。
すべてを変えれば比較できません。すべてをそろえれば区別できません。
商品一覧は、小さな売り場です。現物の店舗で商品を棚へ並べるときと同じように、似ている商品をどうまとめ、違う商品をどう見分けさせるかまで考えます。
04
サムネイルで見える主役を決める
商品画像を作るとき、Tシャツ全体を必ず見せようとすると、プリント部分が小さくなります。
反対に、プリントへ寄りすぎると、Tシャツの形、丈感、プリント位置が分かりません。購入者はグラフィックだけでなく、それがどのくらいの大きさで、身体のどこへ配置されているかも見ています。
どちらを優先するかは、商品の特徴によって変わります。
大きな背面プリントが主役なら、背中全体が見える着用写真が必要です。左胸の小さな刺繍が特徴なら、一覧では全体を見せ、二枚目や詳細ページで接写を使う方が自然かもしれません。オーバーサイズのシルエットが価値なら、プリントだけへ寄るより、モデルの全身に近い写真の方が商品の違いを伝えられます。
一枚ですべてを見せるのではなく、画像ごとの役割を分けます。
一覧の一枚目では、商品として何が違うのかを伝える。二枚目以降では、加工や素材の細部を見せる。詳細ページでは、サイズ感、裏側、プリントの接写まで説明する。
一覧画像へ全部を詰め込むと、結局どれも小さくなります。
「せっかく作ったんだから、全部見せたい」
分かります。
でも、一枚目に全員を乗せたら、全員が脇役になります。
特に注意したいのが、同系色プリントや小さなワンポイントです。
これらは実物では魅力的でも、一覧では消えやすい表現です。その場合は、撮影時の光を調整してプリントの質感を出す、少し寄った画像を二枚目へ入れる、商品名で加工の特徴を補足するなど、デザインを派手に変えずに伝える方法を考えます。
静かな商品は、静かなままで構いません。
ただし、静かすぎて無地の商品に見えたら、まだ売り場へ届いていません。
05
商品名と画像は一緒に働く
商品名は、画像の下に付く管理情報ではありません。
画像だけでは伝えきれない違いを、短い言葉で補う役割があります。
似た黒いTシャツが並んでいても、
- Small Chest Logo Tee
- Back Print Tee
- Washed Black Tee
- Reflective Print Tee
のように特徴が分かれば、購入者は商品を区別できます。
反対に、すべての商品名が抽象的な英単語だけだと、画像と名前の関係が分かりにくくなることがあります。ブランドらしい名前を付けることは大切ですが、一覧で商品の違いが分からないなら、サブタイトルや短い説明で補う方法もあります。
商品カードでは、画像、商品名、価格が一緒に働きます。
画像は見た目を伝える。商品名は違いを伝える。価格は購入条件を伝える。
この三つの役割が重複しすぎたり、逆にどれも説明不足になったりしないようにします。
たとえば画像で背面プリントがはっきり見えているなら、商品名で同じことを長く説明する必要はありません。画像では分かりにくい特殊加工なら、名前やバッジで補う意味があります。
一覧カードは小さいからこそ、役割分担が必要です。
06
拡大しないと分からない魅力をどう伝えるか
刺繍の立体感、織りネームの細かさ、発泡プリントの厚み、布の風合い。こうした魅力は、小さな一覧画像だけでは十分に伝わりません。
だからといって、一覧画像の中へ接写、全体、着用、裏側を全部詰め込むと、写真が小さなコラージュになります。情報は増えていますが、何を最初に見ればよいのか分かりません。
一覧では、細部があることだけを気づかせます。
刺繍部分へ光が当たり、少し立体感が見える。プリントに厚みがあり、影が落ちている。商品名に「刺繍」「発泡プリント」と短く入っている。二枚目へ進めば接写がある。
詳細を全部見せるのではなく、「ここには何かある」と思わせる程度でよいのです。
詳細ページの感動は、クリックされた後にしか届きません。
まず、そのクリックが必要です。
07
数秒で選ばれる場所までデザインする
「商品は数秒しか見られない」というのは、厳密な秒数を測る話ではありません。
商品一覧は、長い説明を読んでもらう場所ではない、ということです。
人は画面をスクロールしながら、気になる商品で手を止めます。その短い時間で、少なくとも次のことを判断します。
- 何の商品なのか
- ほかの商品と何が違うのか
- 自分に関係がありそうか
- 価格帯は合いそうか
- もう少し詳しく見る価値があるか
ここで伝えるべきことを整理すれば、必ずしも派手なデザインにする必要はありません。
落ち着いた商品なら、背景やトリミングを統一し、プリント位置が見える角度を選び、商品名で特徴を補えばよい。細かなデザインを無理に大きくするより、一覧で認識できる一つの手掛かりを作ります。
確認するときは、完成した商品画像を単体で大きく開くだけでは足りません。
実際の商品一覧へ入れる。隣に似た商品を置く。スマートフォンの二列表示で見る。画像を縮小する。スクロールしながら見る。
その状態で主役が残っているかを確認します。
商品詳細ページのデザインが完成してから、一覧へ小さく置いて驚くのではなく、最初から売り場の大きさで考えます。
商品は、詳細ページで評価される前に、一覧で選ばれます。
拡大したときに良いデザインを作ることは大切です。 同時に、拡大してもらえるデザインにしておく必要があります。